第5話「死骸を呼ぶ女」は、2人の男の間で心が揺れ動く女の気持ちを、主人公が何とか自分の方に向けさせようとする三角関係の話ですが、ライバルの男はよみがえった死体、女はさまよえる幽体である点がホラーになっています。煙突の煙の色の違い、白いテーブルクロスの上に引かれた平行線、新聞で作る紙の家は、ヒッチコック作品に対する神代監督のオマージュでしょうか? DVDの第1巻と第2巻に収録の4作品を見て「円谷プロ制作にしては特撮らしい特撮がないぞ」と不満を持たれた方、本話には、すさまじい崖崩れをバックに工事関係者たちが逃げまどう場面と、絶息状態に陥った女の肉体から幽体がぬけ出す描写に、得意の合成技術が巧みに使用されています。また登場場面は僅かながら、事故現場の救助指揮責任者として小林昭二が出演しているのも、ウルトラファンには嬉しい点でしょう。きびきびとした口調で手際よく作業を指揮する姿は天下一品です。なお「木乃伊の恋」同様、1993年にKSSから発売されたLDボックスには本話の別ヴァージョン30秒予告編が収録されていましたが、このDVDには未収録です。この2作品だけ2種類の予告編があるというのも不自然な話なので、もしかしたら全13話について予告編は2ヴァージョン作られていたのかもしれません。第6話「地方紙を買う女」は、松本清張の短編をフジテレビの社会派ドラマ『若者たち』で知られる森川時久が映像化した佳作。後に2時間ドラマにもなっていますが、幸福な結婚生活を送っていた女が、自分にはどうしようもない出来事によって犯罪の道へ落ち込んでいかざるを得なかった悲しく哀れな姿は、原作の分量から言ってもこの45分版の方がよく伝えきれているように思えます。女が嘘を言っていることに気づきながらもそれを口に出さない作家と、相手が自分の嘘に気づいていることを察しながらもそれをおくびにも出さない女。この2人の水面下の火花の散らしあいを、井川比佐志と夏圭子が好演しています。ラストに井川比佐志と山本圭の間で繰り広げられる激しい意見の応酬は、1960年代末期のディスカッションの時代の息吹を感じさせる、森川監督らしいカデンツァですが、悲しい結末で終わった事件の余韻を断ち切ってしまった点で、評価の分かれるところでしょう。第2巻同様、映像特典として収録されている夏圭子と井川比佐志のインタビューとトークが商品価値を高めています。 DVD恐怖劇場アンバランス Vol.3 関連情報
第11話「吸血鬼の絶叫」は『怪奇大作戦』の勝呂誉の主演ですが、陰のない好青年が売りの勝呂が闇と血を題材にしたホラーの主人公というのは無理があり、ご本人もどういう演技をしていいのか図りかねている印象です。『ウルトラQ』と『ウルトラマン』で物静かで理知的な科学者を演じた富田浩太郎が、不気味なメークで衒いもなく吸血鬼役を楽しんでいるのと好対照です。また『ウルトラマン』の「バラージの青い石」でエキゾチックな美女を演じた弓恵子の素顔が見られるのも、ファンには興味深いかもしれません。第12話「墓場から呪いの手」は冒頭いきなり山本耕一が包丁で死体を切り刻む場面から始まってギョッとさせられますが、殺した女の手首に復讐される陰鬱な主人公に山本を起用したのは成功しています。ホラードラマとして上質の仕上がりで、満田かずほ監督の演出力の幅の広さに敬服させられます。第13話「蜘蛛の女」は本シリーズの中では最も猟奇性の強い作品で、初放送順が最後に回されたのも納得です。強面の今井健二を顎で使う一方で優男の佐々木功をペットにする八代万智子の妖艶さが見事で、『マグマ大使』であの江木俊夫の優しいママを演じた同じ女優さんとはとても思えません。本当に、女は化けますねえ。DVD最終巻に収録されたこの3本はそれぞれ制作上の2,1,4番目に当たる作品で、本番組が「子供には絶対見せられない」強烈なホラードラマを目指していたことがわかるとともに、撮影時期が真夏であったことが劇中にそのまま反映しているので、寝苦しい夏の夜に見るのが最適かと思います。なお1993年にKSSから発売されたLDボックスのディスク7には、各話の代表的なシーンを集めて作った番組告知CF(30秒ヴァージョンと15秒ヴァージョン)が収録されていましたが、今回のDVDにはとうとう未収録で終わってしまいました。残念! DVD恐怖劇場アンバランスVol.6 関連情報