山本一力 商品

山本一力 あかね空 (文春文庫)

著者の山本一力さんがインタビューで「あかね空」に自分の奥さんをダブらせている・・・というような表現があり、興味を持った。表装を見てもわかるように、これは時代劇っぽいムードがある。実際そうなのだが、京都の豆腐屋ののれんわけで江戸に出てきた主人公が悪戦苦闘しながら自分の味を出していく。主人公の女房はちゃきちゃきの江戸っ子風情。ところが時代と共に彼女が変化する。妻であることから母であることを重要視するのだ。豆腐の味・暖簾は親子二代にわたって引き継がれる。夫婦の愛、親子の愛、兄弟妹の情、周囲の人との人情・・・・時代劇という風情だからこそ違和感なく味わうことのできる素敵なお話だった。 あかね空 (文春文庫) 関連情報

山本一力 次郎長 背負い富士 DVD-BOX

 いい時代劇を見させてもらった。中村雅俊さん、小倉一郎さんそれに海といえば、七里ヶ浜のイメージだが、今回は江戸から明治への移行期を生き抜けた渡世人が、周囲に生かされて渡る世間という側面をドラマに描く。長五郎の少年時代を演じた小清水一輝さんは、見る人の親心を目覚めさせる好演。大政役の草刈正雄さんの姿を拝見したのは土曜ドラマ以来だが、背筋の伸びた姿は相も変わらず、いい男だ。 原作の山本一力さんの作品は読んでいないが、ドラマを見る限り、明治維新へと動く時代背景も入れながら、人と人との出会いの中に見いだす、つながりの糸や脈というものの繊細さ、さらには価値観の照らし合わせも問う映像に表現できていると思う。やや気が強うそうで幼さも残る、次郎長の最初の妻きわ役は松尾れい子さん。 次郎長は、凶状持ちとなってしまい三行半をきわに差し出し、「縁は切れても次郎長の女房はおまえ一人だぜ」の言葉を残し、無宿者となり縁あって三州に向かう。ところがどっこい、殺って川に放り込ん連中は、・・・。 清水に戻った次郎長は、きわが油問屋に嫁いだことを知り、二番目の妻お蝶と結婚した後のある日、ばったり、街できわに会う。「やっとあなたの夢を見なくなったのに」。これは、効くねえ、ご同輩! 勝ち気な役柄のお蝶役をこなすのは、田中美里さん。この俳優さんもまた、美しい。瀬戸への逃亡の旅は、暑気あたりでやつれ、荷車で子分たちに引いてもらう姿が、何とも、画面に向かって手を引いてあげたくなるほど。 米問屋甲田屋の番頭役、小倉一郎さんも「俺たちの〜」から何十年も経って、年を取ったなりにいい役柄を醸し出している。全編見ると、434分。時の流れに、一息ついてみてはいかがであろう、ご同輩。DVD3枚セット。脚本、ジェームス三木。演出、冨澤正幸、佐藤峰世、陸田元一。主題歌:中島みゆき次郎長 背負い富士 DVD-BOX 関連情報

山本一力 五二屋傳蔵 (朝日文庫)

山本一力氏にしか描けない下町深川を舞台にした何とも爽快な物語。私自身本所の生まれなので深川はけっこう馴染みのある町なので興味が倍増してしまう。主人公傳蔵の気風の良さ、人を見る目の確かさ、度胸の座り具合・・・魅力いっぱいの人物像。さらに、五二屋を狙う盗人も準備に万全を期しており、手下も裏切りはするものの、最後には一言も白状せずに身を処すことになる。狙う側も狙われる側も気持ちの良いほどの覚悟ができている。一力独特の世界観が余すところなく描かれている。一気に読むのがもったいないと考えつつも、ついついページが進んでしまう。本当に罪作りな作家だ。でもまた次回作を楽しみにしている自分がいる。 五二屋傳蔵 (朝日文庫) 関連情報




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