ユーロに切り替わる前のドイツの100マルク紙幣にクララ・シューマンの顔が描かれていた。かの国においてクララは偉大な音楽家と見なされているのである。しかし、日本では彼女をシューマンの妻、ブラームスの友人として語られることが多かった。かつて出版された原光子、およびナンシー・ライクによるクララ・シューマンの評伝が長く絶版になっていたので、彼女の生涯とその業績について詳しく記した本書の刊行が待たれていた。クララは、貧しい商人の息子から身を起こした楽譜・音楽書商の父親ヴェーグから英才教育を受けて育った。父親はモーツアルトの父にも匹敵する熱意で娘を教え込んだ。彼は厳格ではあったが、毎日クララには3時間以上はピアノを練習させず、声楽を聴かせ、オペラを見せるなど、芸術鑑賞に重きを置く教育を施した。父親は幼いクララを連れてドイツ各地やアムステルダム、パリ、ヴィーンなどを巡業し、彼女を天才少女ピアニストとして売り出そうとした。しかし、クララが思春期になると二人の間に亀裂が生まれ、彼女がシューマンと愛し合うようになって父娘の対立は決定的となった。クララはピアノ演奏の傍ら作曲にも着手し、次々に作品を発表する。しかし、夫シューマンの「女は作曲をすべきではない」との考えから次第に作曲から遠ざかっていく。彼女も当時の保守的な考えから逃れることはできなかったのだ。シューマンの死後、クララのピアニストとしての名声はヨーロッパ中に鳴り響いたが、彼女は演奏会のプログラムの中心に亡き夫の作品を置くのが常であった。晩年、クララは音楽院の教授として多くのピアニストを育てたが、彼女の奏法は弟子を通じてアメリカにまで広まっていったのである。著者は膨大な資料を基にクララの行動を克明に描き出すことで、彼女の旺盛な創作意欲と音楽への献身を浮き上がらせる。同時にクララが置かれた窮状も明らかにする。病弱な夫を支え、7人の子供を育てながら、家計のやりくりや演奏会のプロデュースや楽譜出版、各地への巡業、気苦労の絶えない過酷な状況が何10年も続いた。そのクララを温かく励まし続けたのがブラームスであった。しかし、彼女がピアノに向かえば耳の肥えたロンドンやヴィーン、パリ、モスクワの聴衆を夢中にさせた。当時のトップ女性ピアニストとしてのクララの活躍が詳しく記述されている。もちろん、彼女とメンデルスゾーンやブラームス、ヨアヒムとの交友も記されている。七十歳を超えて、もはや演奏できないかもしれないという考えは、クララには受け入れられないものであった。クララにとって音楽は、「私がその中で呼吸している空気」のような存在であった。「私の内奥を温めることができるのは、音楽と人間のみである」。これほど音楽と一体化した女性を私は知らない。ぜひ彼女の曲を聴いてみたいと思った。玉川裕子さんによる明晰で読みやすい日本語訳に助けられた。巻末に詳しい人名索引、年譜、作品表、証言、文献、図版出典が完備している。 クララ・シューマン 関連情報
ブラームスについては,没後100周年にいろいろな素晴らしい本が出ていましたが、この本は実は1950年、ダヴィッド社から原田光子さんの訳で出た本の、復刻です。伝記でよく見聞きするブラームスとシューマン夫妻の関係には諸説ありますが,この書簡で読むと、余人が入り込めない、しかし共感できる、少し涙が出てくるような関係であったことがわかる,書簡集です。それは、「クララとヨハネス」が、偽りなく,真摯に自らの所感を語り,相手のことを少しでも多く理解しようとした,そうした魂の邂逅をかいま見させてくれる、そのためだと思います。訳者の原田さんに,重ねて感謝! クララ・シューマン ヨハネスブラームス 友情の書簡 関連情報
ついついシューマンを中心に観がちの自分を抑えたレビューです。シューマンやクララの芸術家としてのあり方、作品や背景より当然主役はタイトルどおりクララなのだから なるほど こういう映画なのだなと納得です。内容は端的に言うと●”恋愛”で”才能”で 嫉妬に苦悩する男たち(シューマン、ブラームス)、●シューマンへの義理はきちんと感じ クララを深く愛しているからこそ際まで行かなかった 最終的にはやはり硬派男? ブラームス現実の生活に困窮し苦悩するがやはり夫 ロベルトの才能を深く尊敬、愛する奥方クララという面は良く現れていていました。しかし下3つ 特にシューマンの自殺未遂背景は どうにも引っかかったんですがこれが史実に最も忠実というのならそうなんだろう。。。そういうものとして観れば まぁいいかなとも思います。”映画”なのだから■ブラームスのやってきた当初、ちょいとチャラ男風で積極的で 髪型は肖像画にあるワンレングスじゃなかった (無知なので ワンレングスは私の思い込みか)■とにかく来たころのブラームスが積極的で これがリストなら納得(笑) クララ・シューマン 愛の協奏曲 [DVD] 関連情報
感想ですが、クラッシックファンとしてみれば、理解できる内容でした。そうでない人には、いまいち伝わらないような気がしました。ドイツマルクの紙幣なった、クララ・シューマンの物語であるのですが、何かイマイチというのが、正直な感想です。ただ、シューマンがクララに、「トロイメライ」を聴かせるシーンは良かったです。 哀愁のトロイメライ ~クララ・シューマン物語~ [DVD] 関連情報
クララ・シューマン―愛をつらぬいた女性ピアニスト (学習漫画 世界の伝記)
クララの父、音楽教師ヴィークに師事していたロベルト・シューマン。クララは既に女性初、貴族以外の場でも演奏活動を行ったピアニストとして名を馳せていた。そんな二人は歳が離れていながらも、深い愛の絆で結ばれていたが、父ヴィークの猛反対に合い、ヴィークはクララをウィーンに連れて行ってしまう。その後、二人は訴訟にまで発展しながらも結ばれ、結婚後も、色々ありながらも二人はずっと変わらぬ愛の絆で貫いた。クララは夫ロベルト・シューマン亡き後も、夫の作品を世に広めるために、世界で演奏活動を行い、晩年もリュウマチと闘いながら、決して演奏活動をやめようとしなかった。こうして今、クララにはロベルト、ロベルトにはクララがいたからこそ、素晴らしい音楽が育まれ、私たちはそれを聴くことが出来る。クララ・シューマンの伝記を読んでいた時間、それは愛と芸術の美しい連鎖を垣間見れた時間でした。 クララ・シューマン―愛をつらぬいた女性ピアニスト (学習漫画 世界の伝記) 関連情報