金子達仁 商品

金子達仁 ラスト・ワン

あまりに凄い内容に圧倒され、考えがまとまりません。ネタバレしてもいけないし、どうレビューしたらよいのかわかりません。しかし書いておきたい、思いつくままでも。関心をもたれた方に、この本を読んでほしいから。最初に一つだけ不満を書いておきます。本の帯にある惹句です。出版社としては人目を引かなければならないのでしょうが「思わずもんどりを打つほどの、衝撃エンディング! 」というキャッチは軽すぎる。品が無い。読むと確かにサプライズ・エンディングなのですが、驚いて終わりのラストではありません。明かされた真実は深く、重い。魂が揺さぶられるような結末でした。読んできた世界をもう一度、1ページ目から振りかえさせられました。この本は冒頭から信じられない言葉がつづられています。(うわ、ホントに出てきたよ、あいつ)(日本の恥のくせに)(障害を売り物にしやがって) 悪意に満ちた、邪悪な波動が押し寄せてくる。日本で散々浴びせられてきた罵声が、フラッシュバックする。障害者差別という言葉さえ生やさしい、残酷なバッシングが中西麻耶さんに集中砲火していたのです。心を深く病むほどまでに。この事実を知って、私は怒りに震えました。日本の恥はいったいどっちなんだ!彼女は本物のアスリートです。高校時代、インターハイ常連の名門校でソフトテニスに全身全霊を捧げていたエピソードは、それだけでも読みごたえがありました。事故で右足を失った後も陸上競技で世界トップレベルまで駆けあがれたのは、それ以前から培われてきた精神力と体力のベースもあったからだと思います。どんな人にも他人からは見えない、人それぞれの事情がある。中西さんもそうでした。外から見えるだけでは知りえなかった、数々の事実が描かれています。身体障害は一つの要因にすぎない。それだけではありません。どれほど多くの試練と闘いながら生きぬいてきたか、目を見はりました。自分を生きていくうえで、他人や社会と摩擦が起きるときもある。彼女のその時その時の選択は、当時の彼女にとって全力だったのだと思います。良かったとか悪かったとか、外野から口を挟めるものではないでしょう。また、ほんのすこしですが、(東京オリンピック招致のプレゼンをした)佐藤真海さんについても書かれていました。中西さんに日本記録を破られて、佐藤さんはとてもショックだったのかもしれませんね‥‥。もちろんスポーツ・ノンフィクションとして優れていますが、そのカテゴリーを遙かに超えています。いま苦しみのどん底にいる方、もし本をひらく力があるならすこしずつでも読んでみてください。中西麻耶がいま生きているという事実が、それでも人は前を向いて生きていけるのだという真実が、人のなかの奥深くで息吹いている生命力の存在に気づかせてくれるでしょう。命のベクトルは、前へ進むのだと。中西麻耶さん、語ってくれてありがとう。私はあなたの味方です。 ラスト・ワン 関連情報

金子達仁 28年目のハーフタイム (文春文庫)

スポーツライター金子達仁の出世作にして、僕の知る限りで彼の作品では本書が最高の出来栄え。 原型となったルポ「叫び」「断層」でミズノ・スポーツライター賞を受賞している。 1996年7月、アトランタ五輪でブラジル代表を破るというジャイアントキリングをやってのけた日本五輪代表チーム。そのメンバーの何人かは現トゥルシエジャパンでも活躍している。 「歴史的快挙」を成し遂げたその五輪チームが抱えていた「断層」を多面的に浮き彫りにしたのが本書最大の特長だ。 西野監督の、川口能活の、中田英寿の、前園の、小倉の、アウダイールの、それぞれの持つ、思い、認識、解釈・・・。そのズレから生じる「断層」、そしてチームの崩壊。 ジャーナリストは「事実」の切り取り方ひとつで「真実」をいかようにも伝えられるが、伝えられる側の「事実(五輪での戦い)の当事者」でさえ、それぞれの「真実」は異なり得る。 それでは「事実」とは「真実」とはいったい何だろう? スポーツノンフィクションの傑作の一つと呼んでいい。 28年目のハーフタイム (文春文庫) 関連情報

金子達仁 サッカー 世紀の名勝負 イタリア VS ブラジル [VHS]

黄金のカルテットが粉砕される試合。とはいえ、両チームのテンションは凄まじい。20世紀最高の名勝負の筆頭といえるこの試合。凄すぎます。 サッカー 世紀の名勝負 イタリア VS ブラジル [VHS] 関連情報




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