文章も読みやすく、歴史小説には珍しく「僕」という一人称で、沖田自身が回顧する形式になっていました。新撰組の沖田というより、沖田総司という一人の青年の生き様、恋愛、死の受け入れ方に重きを置かれた小説といっていいと思います。であるからこそ、読者によって、好き嫌いははっきり分かれると思います。なぜなら、新撰組につきものの、時代に翻弄される哀愁は、そこにはあまりなかったし、あの時代を生きた沖田の感性は、果たしてこうであったろうか、と疑問に思う部分もありました。余談ですが、筆者は「当時も「「僕」という一人称はつかわれていた」と書いていましたが、ある史家によると、それは過激な倒幕志士の間のみであったとか。また、司馬遼太郎氏の新撰組血風録では、総司の恋の相手は違う人物なので、読み比べられたら面白いかと思います。 沖田総司―六月は真紅の薔薇 (下) (人物文庫) 関連情報
脇役と言うにはメインに近いような人物も含まれるが、
諸葛瑾や夏侯月姫など十六人についての短編がまとめられている、
三国志正史を綿密に調べあげたうえで、
筆者なりにとらえた各人の心の動きを具に描いている、
しっかりと正史を周到しているため、矛盾や不可解さを感じることはなく、
時間や記述の空間を巧みに埋め、事実の羅列であった正史を、
事実に則した小説へ昇華させており、
各編が短編であることが惜しいと思われるような濃厚さがある。
どちらかと言えば軍師や参謀的な人物(賈ク、虞翻、許靖など)が多く、
猛将名将(ホウ徳)と言われる人物は少ない、
そのためか、本書は血湧き肉躍る三国志ではなく、
時代を超える賈クの深謀ぶりや、
生まれや境遇の中必死で藻掻く裏切り者ではない孟達など、
深謀遠慮の中で揺れ動く人々が多く書かれている。
しかし、内容にそぐわないサブタイトルだったり、
取り上げた人物よりもその周囲にウェイトが置かれていたり、
(夏侯月姫がその代表的な物で、張飛一族の話となっている)
また、歴史を題材とするに当たっては残念なことに、
石弓(弩)とか許猪(キョチョのよくある誤字)などなど、
誤植と言う以前の誤字が目立つ、三国迷としてはかなり興ざめであるが、
それを差し引いても十分に楽しめた良書である。
三国志外伝 (光文社時代小説文庫) 関連情報
香取君主演の大河ドラマ新撰組が決定してから堅苦しくない物語をさがしていたのですが、コレはいいです。題名には沖田総司が入っているのですが近藤勇、土方歳三はもちろんのこと原田、永倉、山南などなど登場人物はその性格もわかるほどです。新撰組発足からピーク解体までさまざまな出来事(実在の)とともに描かれ歴史の勉強にも役に立ちました。 沖田総司―六月は真紅の薔薇 (上) (人物文庫) 関連情報
一昨年の大河ドラマ「新選組!!」は一年通して見ましたが、この作品はその大河ドラマでみた逸話が結構あったので、もしかしたら大河ドラマはこの作品を多く手本にしたのではないか?と思いました。
新撰組関連の小説だと「燃えよ剣」だけしか読んだことがなかったのですが、この作品もまた良い作品だと思います。土方歳三の人物像を上手く描けていると思います。新選組を読んだことがない人には読んで欲しい小説です。
土方歳三―戦士の賦〈上〉 (人物文庫) 関連情報
まず、幕末の長州における吉田松陰の影響力を語るために、作品冒頭は高杉晋作
ではなく松陰の生い立ちから最期までを描いており、
初めはその部分が、言うなれば、のんびりしていてつまらなくも感じたが、
読み進めると、松陰が晋作その他の松陰門下の長州藩士の思想及び行動規範の根
源となっている事を強調するために必要なものなのだと考え直した。
本作は、よく知られる晋作の行動・発想の奇抜さだけでなく、詩の才能の方にも注目し、詩が数多く出てくるのだが、
それが、貴族が詠むような修辞や形式に凝り固まったものではなく
自分の置かれた状況や現在のその時々の心情を曇り無く吐露しているような作
風のものばかりで、
晋作の人物像がよく分かるもので面白い。
上士階級に属し、昔ながらの固い考えの父を持つ晋作が、
無茶をして父を心配させる事に気兼ねをしつつも時代の風雲に身を投じ、
藩の世子や同志に愛されながら才能を発揮してゆくのだが、
戦闘場面をもう少し広げて派手さがあっても良かったのではないかと思わなくも
ないが、
晋作の内面の機微をうまく捉えた丁寧な作りでなかなか楽しめる作品だったと思う。
読んで損はない。
高杉晋作 (人物文庫) 関連情報