5時に夢中からは想像できない。そんなに頑張らなくてもいいよ…そう言ってあげたくなります。 十年介護 (小学館文庫) 関連情報
TOKYO MXテレビでMCを務める、著者の町亞聖をとても好ましい思いで見ている。もちろん若い頃から介護生活をしたことは承知していたから、文庫に収録されたこの記録をかねてから読みたいと思っていた。あえて、そう、あえて言うのだとすれば、介護経験やその記録そのものは決して珍しいものではない。私自身もすでに父母ともを見送っているし、亡くなるまでや亡くなった後の頑張りや苦労を読むことで感動の涙なんかが出たりはしない。人が百人いれば百通りの死に方があるし、そのうちの二つを勝手に割り当てられて否が応にも経験させられるのが両親の看取りというものである。むしろ私はリリー・フランキーの「東京タワー」を読んだ時と同じく、「あ、みんな同じなんだな」って思った。親の死は、親が子供にしてくれる最後の教育である。読者はこの本を通して青春期の彼女がどう成長したのかという軌跡を読み取ることができる。そしてどう読み取るかについては、読み手の力に委ねられていると思う。今、MXのキャスターとして魑魅魍魎のようなコメンテーターを相手にバッサバッサと番組をさばく彼女は、本人が思い描いていた「伝える仕事がしたい」という理想にどれだけ近づいているか私にはわからない。しかし彼女がそこで見せる、シモネタにも動じることなく、かと言ってわからないフリをするでもなく右へ左へ受け流す技術は、一体どこで学んだのだろう。その大雑把なMC技術にこそ、私は40歳を超えた彼女の成長を見出すのである。仮にシモネタを浴びようとも彼女は、他の多くの女性キャスターのように困った顔をして誰かの助けを待ったりしない。そして同時にその言葉を発した人を含む他人に対する敬意を、決して失うことはないのだ。あるいは深刻な社会問題を伝えるときにも、彼女は「真面目な自分」に酔うことはない。ブログを見ても、環境問題を語るふりをして満ち足りたLOHAS生活を自慢する、どこぞの元女子アナとは一線を画す。彼女にこうした姿勢をもたらした最後の教育たる両親の介護の意味を、この本が痛烈に伝えてくれるのである。だから★は甘めの5つ。それから、このレビューを必ず読むであろう町さん、早く結婚せい。もっと自分の今を生きるんだよ。(蛇足)小学館の担当編集者に告ぐ。内容紹介の中で2回も使われている「若干」という言葉の使い方が間違っている。たぶん「弱冠」と間違えたと思うが、そもそも意味が違っている。言葉のプロがそういうミスで著者に恥をかかせるな! 十年介護 関連情報