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uptight Uptight (1968) [Blu-ray] [Import]

1968年4月。キング牧師が暗殺されて以降、アメリカ中の黒人コミュニティは深い悲しみに包まれていた。クリーブランドの黒人居住区に住むタンク(ジュリアン・メイフィールド)もまたその1人。過激派の親友ジョニー(マックス・ジュリアン)から、武器庫の強盗を誘われるものの、深酒の状態で仕事を断ってしまう。ジョニーの計画は実行に移されるが、強盗の最中に警備員を殺してしまい指名手配される。失業中のタンクは、ジョニーに懸賞金1000ドルがかけられたことを知り、心が揺れる…。リーアム・オフラハティの小説"The Informer"(映画化作品の中では、ジョン・フォード監督の『男の敵』が何と言っても有名)を基に、ジュールス・ダッシンが脚色、監督した作品。舞台を1920年代のダブリンから、公民権運動が高まっていた1968年のクリーブランドの黒人居住区に移した実に大胆な翻案だ。原題の"Uptight"とは、「極度に緊張している」という意味。日本劇場未公開。映画監督の人生そのもの、あるいは人生観というものは、多かれ少なかれ、作品に反映されるものだ。特に、ダッシン監督といえば、赤狩り時代のブラック・リストに載り、米国を離れざるを得なかったという、人一倍、波瀾に満ちた人生を歩んだ映画人だから、映画ファンとしては、彼の作品に、つい彼の人生の片鱗を見い出そうとしてしまう。しかも、本作は、密告者が主人公であり、「裏切り」がテーマになっているので、赤狩りを連想してしまうのは、至極当然のことだろう。なぜ、苦い思いで後にした母国を舞台にし(『深夜復讐便』以来、実に19年ぶり)、公民権運動の渦中に、密告者を描かなくてはならなかったのか―ダッシン監督の心中は察するにあまりある。本作は、ダッシン監督にとって、自身の母国アメリカへの(苦い)思いの総括であり、赤狩りのような過ちは、二度と起こしてはならないという警告が込められている作品なのではないだろうか。映画ファンの勝手な深読みと思い込みに過ぎないことは重々承知しながらも、そう思わずにはいられない。ただし、本作における、ダッシン監督の密告者の描き方は、決して容赦のない告発的なものではない。それどころか、同情的な描き方さえしている。主人公タンクに、(ダッシン監督を「売った」)エドワード・ドミトリク監督やフランク・タトル監督を投影し、許されざる唾棄すべき人物として描く、というようなことはダッシン監督はしない。あくまで、密告者の人間的な弱さ、彼の心に差した魔、背負い込んだ罪悪感をじっくりと見据え、密告という行為に及ばざるを得なかった彼を理解しようとする。そこから感じられるのは、密告者に対する怒りではなく、赦し。そこが、ダッシンという人間の寛容さであり、冷静さなのだろう。赤狩り時代から約半世紀が過ぎた1999年に、エリア・カザン監督のアカデミー名誉賞受賞に抗議するためにデモに参加し、最期まで、赤狩りへの怒りを収めることがなかったエイブラハム・ポロンスキー監督とは違い、ダッシン監督は、早い時期に、密告者もまた、同じ人間であるということを理解し、赦すことによって、自分なりに、赤狩りへの決着をつけたのだ。そういったダッシン監督の個人的な思いに加え、本作は、映画的興奮に溢れた作品でもある。ダッシン作品の特徴として、舞台となる町が、単純な作劇上の背景としてではなく、人格を持った登場人物と言っていいほど重要な役割を担うということが挙げられる。『裸の町』のニューヨーク、『街の野獣』のロンドン、『男の争い』のパリ…同様、本作でも、主人公タンクに覆いかぶさるように彼を追い詰め、時には、敵意すらむき出しにするかのようなクリーブランドの町が、実に生々しく、表情豊かに描き出されている。しかも、本作では、撮影をボリス・カウフマンが担当しているだけあって(何せ、ジャン・ヴィゴ監督の『ニースについて/競泳選手ジャン・タリス』で、ドキュメンタリー・スタイルを確立した人だ!)、クリーブランドの危険で猥雑な生の空気をきめ細かく捉えてみせ(そこに生活する黒人たちの顔のクローズ・アップも印象的)、ダッシン作品の世界観をより深化させている。まさに、ロケーションによる息遣いと真実味を重んじるダッシンとカウフマンの独壇場といった感じだ。アクション演出の切れ味も、ダッシン監督らしい。黒人居住地区の集合アパート(黒人たちがベランダにズラリと並ぶ)での警察とジョニーの銃撃戦、そこかしこでタイヤが燃える廃棄物処理場から工場の高所へと移動するタンクの逃走…などの目の覚めるようなアクションの躍動と画の力強さはどこまでも瑞々しい。本作は、ダッシン監督の後期の力作として、もっと評価されてしかるべき一編ではないかと思う。本Blu-rayは、売れ筋ではないものの、興味深いパラマウントの佳作、秀作をライセンス発売しているOlive Filmsのもの。ただし、本家パラマウントのように、4Kフィルム・スキャン(フレームごとのレストアも)によるHDマスターではなく、おそらく、オリジナル・ネガかマスター・ポジからHDテレシネされたもの(HDCAM SR?)がマスターなのだろう、細かいキズも散見され、あまり鮮やかでない色調、甘めのディテール表現の画質。DTS-HDマスター・オーディオの音声は、特に問題なく明瞭だ。例によって、特典は一切収録されておらず、本編のみ(メニュー画面は、「再生」と「チャプター」のみ)という味気なさだが、日本未公開作でもあるので、ダッシン監督のファンであれば、是非とも持っていたい1枚だ。英語字幕は未収録。北米盤ながら、日本同様、R-A仕様なので、日本のBlu-rayプレーヤーで問題なく視聴可能だ。 Uptight (1968) [Blu-ray] [Import] 関連情報

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1968年4月。キング牧師が暗殺されて以降、アメリカ中の黒人コミュニティは深い悲しみに包まれていた。クリーブランドの黒人居住区に住むタンク(ジュリアン・メイフィールド)もまたその1人。過激派の親友ジョニー(マックス・ジュリアン)から、武器庫の強盗を誘われるものの、深酒の状態で仕事を断ってしまう。ジョニーの計画は実行に移されるが、強盗の最中に警備員を殺してしまい指名手配される。失業中のタンクは、ジョニーに懸賞金1000ドルがかけられたことを知り、心が揺れる…。リーアム・オフラハティの小説"The Informer"(映画化作品の中では、ジョン・フォード監督の『男の敵』が何と言っても有名)を基に、ジュールス・ダッシンが脚色、監督した作品。舞台を1920年代のダブリンから、公民権運動が高まっていた1968年のクリーブランドの黒人居住区に移した実に大胆な翻案だ。原題の"Uptight"とは、「極度に緊張している」という意味。日本劇場未公開。映画監督の人生そのもの、あるいは人生観というものは、多かれ少なかれ、作品に反映されるものだ。特に、ダッシン監督といえば、赤狩り時代のブラック・リストに載り、米国を離れざるを得なかったという、人一倍、波瀾に満ちた人生を歩んだ映画人だから、映画ファンとしては、彼の作品に、つい彼の人生の片鱗を見い出そうとしてしまう。しかも、本作は、密告者が主人公であり、「裏切り」がテーマになっているので、赤狩りを連想してしまうのは、至極当然のことだろう。なぜ、苦い思いで後にした母国を舞台にし(『深夜復讐便』以来、実に19年ぶり)、公民権運動の渦中に、密告者を描かなくてはならなかったのか―ダッシン監督の心中は察するにあまりある。本作は、ダッシン監督にとって、自身の母国アメリカへの(苦い)思いの総括であり、赤狩りのような過ちは、二度と起こしてはならないという警告が込められている作品なのではないだろうか。映画ファンの勝手な深読みと思い込みに過ぎないことは重々承知しながらも、そう思わずにはいられない。ただし、本作における、ダッシン監督の密告者の描き方は、決して容赦のない告発的なものではない。それどころか、同情的な描き方さえしている。主人公タンクに、(ダッシン監督を「売った」)エドワード・ドミトリク監督やフランク・タトル監督を投影し、許されざる唾棄すべき人物として描く、というようなことはダッシン監督はしない。あくまで、密告者の人間的な弱さ、彼の心に差した魔、背負い込んだ罪悪感をじっくりと見据え、密告という行為に及ばざるを得なかった彼を理解しようとする。そこから感じられるのは、密告者に対する怒りではなく、赦し。そこが、ダッシンという人間の寛容さであり、冷静さなのだろう。赤狩り時代から約半世紀が過ぎた1999年に、エリア・カザン監督のアカデミー名誉賞受賞に抗議するためにデモに参加し、最期まで、赤狩りへの怒りを収めることがなかったエイブラハム・ポロンスキー監督とは違い、ダッシン監督は、早い時期に、密告者もまた、同じ人間であるということを理解し、赦すことによって、自分なりに、赤狩りへの決着をつけたのだ。そういったダッシン監督の個人的な思いに加え、本作は、映画的興奮に溢れた作品でもある。ダッシン作品の特徴として、舞台となる町が、単純な作劇上の背景としてではなく、人格を持った登場人物と言っていいほど重要な役割を担うということが挙げられる。『裸の町』のニューヨーク、『街の野獣』のロンドン、『男の争い』のパリ…同様、本作でも、主人公タンクに覆いかぶさるように彼を追い詰め、時には、敵意すらむき出しにするかのようなクリーブランドの町が、実に生々しく、表情豊かに描き出されている。しかも、本作では、撮影をボリス・カウフマンが担当しているだけあって(何せ、ジャン・ヴィゴ監督の『ニースについて/競泳選手ジャン・タリス』で、ドキュメンタリー・スタイルを確立した人だ!)、クリーブランドの危険で猥雑な生の空気をきめ細かく捉えてみせ(そこに生活する黒人たちの顔のクローズ・アップも印象的)、ダッシン作品の世界観をより深化させている。まさに、ロケーションによる息遣いと真実味を重んじるダッシンとカウフマンの独壇場といった感じだ。アクション演出の切れ味も、ダッシン監督らしい。黒人居住地区の集合アパート(黒人たちがベランダにズラリと並ぶ)での警察とジョニーの銃撃戦、そこかしこでタイヤが燃える廃棄物処理場から工場の高所へと移動するタンクの逃走…などの目の覚めるようなアクションの躍動と画の力強さはどこまでも瑞々しい。本作は、ダッシン監督の後期の力作として、もっと評価されてしかるべき一編ではないかと思う。本Blu-rayは、売れ筋ではないものの、興味深いパラマウントの佳作、秀作をライセンス発売しているOlive Filmsのもの。ただし、本家パラマウントのように、4Kフィルム・スキャン(フレームごとのレストアも)によるHDマスターではなく、おそらく、オリジナル・ネガかマスター・ポジからHDテレシネされたもの(HDCAM SR?)がマスターなのだろう、細かいキズも散見され、あまり鮮やかでない色調、甘めのディテール表現の画質。DTS-HDマスター・オーディオの音声は、特に問題なく明瞭だ。例によって、特典は一切収録されておらず、本編のみ(メニュー画面は、「再生」と「チャプター」のみ)という味気なさだが、日本未公開作でもあるので、ダッシン監督のファンであれば、是非とも持っていたい1枚だ。英語字幕は未収録。北米盤ながら、日本同様、R-A仕様なので、日本のBlu-rayプレーヤーで問題なく視聴可能だ。 Uptight (1968) [DVD] [Import] 関連情報




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