クルト・ザンデルリング 商品

クルト・ザンデルリング ブラームス:交響曲全集

クルト・ザンデルリング(Kurt Sanderling 1912-)とベルリン交響楽団によるブラームスの交響曲全集。アルト・ラプソディとハイドンの主題による変奏曲が併録されている。アルト独唱は、アンネッテ・マルケルト(Annette Markert)。1990年の録音。ザンデルリングはドイツの指揮者であるが、母親がユダヤ人であったため、第二次大戦中にソ連に移り、以後ソ連、東ドイツを中心に活躍した。東ドイツ時代の1971-72年に名門ドレスデン・シュターツカペレとブラームスの交響曲全集の録音を一度完成させていて、名盤の誉れが高い。それで、当録音はオーケストラを変えて2度目の全集ということになる。ザンデルリングという指揮者の第一の特徴は、古典的な和声を重んじ、合奏音を保守的なカラーに統一することにあると思う。それで、彼がショスタコーヴィチやシベリウス、ラフマニノフを振っても、どこか奥ゆかしい雰囲気があって、古典的な調性の響きが主となっていて、攻撃性の少ない厳かさが印象となって伝わる場合が多い。私が聴く限りではベートーヴェンの初期〜中期、それにブラームスの作品がザンデルリングのスタイルによく適合し、響きが自然で伸びやかになるように思う。それで、このブラームスも、スローなテンポでじっくり練り上げた、調和を重んじた音楽になっていて、強いインパクトを設けるわけではなく、総合的に厚みの豊かな音楽が出来上がっている。その特徴が如実に伝わるのが緩徐楽章。例えば、第2交響曲や第4交響曲の第2楽章。安定した弦楽器陣のグラデーションをしっかりと響かせて、その存分なエコーを保ちながら「曲想の移ろい」を分け隔てるインターバルの確保のため、一層ゆったりとしたテンポが終始貫かれることになる。上述の通り、スローで一様なテンポの場合、曲想の分け隔ては「大きな間合い」をとることによる場合が普通。ここにおけるザンデルリングの手法でもそれが中心である。ただし、第1交響曲の第1楽章のように、エネルギッシュな音楽では、やや踏み込んだ金管や弦のアクセントがあり、心地よくタメの効果を高めることで、フレージングの効果をもたらしていて気持ちよい。総じて、美しいバランスのとれた力演だと思うが、第3交響曲の終楽章のようなブラームスが強い個性を解き放った箇所〜後期ロマン派の情熱の迸(ほとばし)りを感じる部分〜が埋もれるところがあり、後期ロマン派の特有の強い薫りを感じる前に曲が終わってしまうように思えるところもある。もちろん、当録音が品質の高い演奏であることは間違いないが、上記の様な弱点を、「オーケストラの力強い感情表出」で克服していたドレスデンとの旧録音の方を「代表録音」として挙げる方が多くてもおかしくないだろう。なお、同内容の輸入盤も取り扱いがあります。 ブラームス:交響曲全集 関連情報




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