余震(アフターショック) そして中間層がいなくなる
元クリントン政権の労働長官でカリフォルニア大学大学院教授の書ということで理論やデータだらけの堅苦しい書を想像していたが、極めて平易でわかりやすい。米国はかつて豊かな中流階級が牽引する国だったのふが、いつのまにか富裕層に富が偏在する国になり活力を失ってしまったと説く。 大物政治家が大企業幹部と政界を回転ドアのように行き来し、(ナオミ・クライン「ショック・ドクトリン」にも詳しい)、官僚は高給のロビイストに転身して大企業・金持ち優遇政策を推進する。リーマン・ショックのとき大恐慌に陥ることは避けられたが、それゆえ改革は中途半端なものになり、人々の鬱屈はたまる一方だ。「ティー・パーティ」が人気を集めていることも、こういう状況が現認だろう。このままこの状態が続くと新しい過激政党がキャスティング・ボードを握ることになるかもしれない。 著者は低所得層には減税、さらに給付金を与え、その分富裕層に対する増税や炭素税の導入を説く。日本ではアメリカほど大企業幹部と一般労働者の所得格差はないが、非正規社員の増大で貧困層の割合が増えている現在、本書にある現状は対岸の火事ではない。 本書の最後に「近い将来怒った人々がウォール街に押し掛けるかもしれない」とあるが正に現実となってしまった。今のところは統一された政治的行動にまでは至らないが、金融大企業ばかりが救済されるようだと、ヨーロッパのように暴徒化し不安定な国になっていくかもしれない。
余震(アフターショック) そして中間層がいなくなる 関連情報
アシャンティ
アシャンティ・ダグラスは2001年以降、飛ぶ鳥を落とす勢いとなったマーダー・インクの看板ディーバである。若い歳ながら作曲もこなし、ジェニファー・ロペスのI’M REALではメロディを書き、サビではジェニファー・ロペスとデュエットしている。勿論デビュー前のコラボレートながら5週間に渡って全米の首位を独走し、デビュー後の勢いを決定付けた。さらにJA RULEの客演としてALWAYS ON TIMEでデュエット、2週間の全米首位を獲得している。そして満を持して発売されたデビュー作である今作は、発売と同時に物凄いセールスを記録し、勿論1位。その後3週間に渡って首位を独走した。そして驚くなかれ、それと同時にデビュー曲フーリッシュが10週間の全米1位、数週に渡って同時期にファット・ジョーと共演したWHAT’S LUVが2位を保持。つまり何週間にも渡ってアルバムとシングルの上位を独占してしまうという快挙を達成。以後、このアルバムからはHAPPYとBABYをリリース、共にランキング上位に食い込むヒットとなった。アルバムとしてはアーヴ・ゴッティと7オウレリウスが共同プロデュース。同レーベルのラッパーのアルバムほどではないがマーダー・インクの雰囲気の出ている内容。レーベル的には少し落ち着いた感もあるが、7の作曲が光っているため、作品の出来はなかなか。アシャンティは今ほど声に特徴も力も宿っていないため、コラボレートアーティストとしてバッキングボーカルが栄えるような涼しげなボーカルを披露。
アシャンティ 関連情報
COVER 70’s
柴田淳の初めてのカバーアルバムで、こちらは、その通常盤です。さて、カバーアルバムなわけでありますが、いわゆる「流行り」であるとか、商業ベースに乗ったものとは一線を画したものであると考えます(もちろん完全否定はしませんが…)。タイトル通り、70年代の名曲をカバーしているのですが、何故「70's」なのか。それは、まさにジャケット(初回限定盤の)の中にいる愛くるしい幼き頃に、お母さんが口ずさんでいた曲たちの数々で、本人曰わく「刷り込み」であったとのこと。自身が青春時代を共に過ごした「思い出の楽曲」とは異なるようで、いわば「柴田淳のルーツ」と言っても良いでしょう。若い世代の人たちに「信者」と言わせるほどの支持を得ている一方で、いわゆる「フォーク・ニューミュージック世代」には「新しくて懐かしい」と感じさせる希有な存在であることも、なるほど頷けます。カバーアルバムをリリースすれば賛否は付き物。特にアレンジに関しては意見の別れるところでしょう。選曲された楽曲はどれもが名曲です。歌詞、メロディー、歌唱はもちろんのこと、そのアレンジが秀逸であることも名曲が名曲たる所以であるのではないでしょうか。柴田淳のルーツを探る意味に置いても、オリジナルのイメージを覆さないアレンジは最善であったと思います。オリジナルを知る人には「懐かしくて新しい」でしょうし、知らない人たちは、しばじゅんを通して「古さの中に出逢った事のない何か」を見つけられるのではないでしょうか。この『COVER 70's』は、カバーアルバムとして成功作だと思いますが、どこかの誰かのようにシリーズ化する事だけは止めて頂きたい。今回の選曲に漏れてしまった楽曲も当然ながらあるでしょうし、歌って欲しい曲はまだまだあります。『70's』の次は『80's』とか切りがないですし、前述のように、やっぱり「流行り」と「商売」か!?、となってしまいますからね。リリース日が10月31日で、デビュー11周年記念日とされていますが、制作期間などを考えれば、10周年企画の最後を飾る特別なものと捉えるべきだと思います。15周年や20周年の折には良いかも知れませんね。なにより、オリジナルが一番なのは言うまでもない事ですから、次のオリジナルを心待ちにしています。もし、初回限定盤と迷われている方がいらっしゃるなら、出来れば「初回限定盤」をお勧めします。通常盤との違いは「ボーナストラック『卒業写真』収録「スリーブケース仕様」「本人書き下ろしライナーノーツ封入」に加え、掲載されている写真は全て通常盤とは異なり、ディスクレーベルも違うという全くの別物です。特にライナーノーツは、このアルバムのコンセプトを理解する上でなくてはならないものです。何故通常盤に未封入なのか理解に苦しみます。『卒業写真』はボーナストラック扱いで、アレンジもオリジナルとは趣が異なりますが、アルバムのバランスを崩すものではないですし、その存在感はラストを飾るに相応しく思います。スリーブケースやブックレットも、初回限定盤のほうがヒネリがあって微笑ましいです。しかし、前述のように、掲載写真は全くの別物ですので、ファンやコレクターの方は「両方」って事になりますかね。『卒業写真』未収録にせよ、作品として高く評価しますが、初回限定盤との比較をすれば☆を減らさざるを得ませんでした。
COVER 70’s 関連情報
日本沈没 1(余震編) (プラチナコミックス)
さいとう・プロの劇画で、主人公の顔がゴルゴ13なのに面食らうが、すぐになれるので心配は要らない。いわずとしれた小松左京の「日本沈没」のコミックなのではあるが、若い人には新鮮かもしれない。というか、たまたま(これが「たまたま」なのか深い計算のうえなのかということも考えてみると面白いのであるが)同じようなテーマを扱ったかわぐちかいじの「太陽の黙示録」(特に第1巻)と同時期に出たこともあり、読み比べるのも面白かろう。原作が小松左京ということもあり、科学的な記述には問題がない。第1巻で特筆できるのはバチスカーフの原理が非常に分かりやすく説明されていることだろう。このことだけでも読む値打ちがあったと思っている。
日本沈没 1(余震編) (プラチナコミックス) 関連情報
Ashanti
彼女のヒットナンバー"foolish"を初めて聴いて、とても印象に残りました。それからFat JOEとの"What's Luv?"やレーベル仲間でもあるJa Ruleとの♯3が全米チャートで快挙を挙げたことは有名な話ですよね。美しい透き通るような声がイントロから最後までたっぷりと堪能できます。発売されてから2年以上経つ今でも、この1stはやっぱり良いです。完成度も高いし、彼女自身の素質も素晴らしいけれど、プロデューサー陣も素晴らしいんじゃないでしょうか。個人的にはどの曲も全部おすすめです。Ashantiの魅力が全面的に押し出されている、(私の中ではイチバンな)ベストアルバムだと思います。
Ashanti 関連情報